ピアノ修復工房

最後のピアノ修復工房の一つ

私たちのアトリエは、プレイエル、ガヴォ―、エラール、ベヒシュタイン、ブリュートナー、ベーゼンドルファー、シードマイヤー、スタインウェイなど一流メーカーのピアノ修復を専門としています。私たちの専門家としての仕事は、その音楽的価値に魅了された楽器や家族の宝物として大切にされてきた楽器を救い、甦らせることです。 修復師のシルヴィー・フアノンは、木やニスの匂いに満たされたこのアトリエで44年の経験を積んできました。ピアノのメロディーの合間に、機械や昔ながらの道具の音が交じり合い、チームワークを組んで進んでいく仕事のリズムを刻んでいます。訪問者は、サロンで修復の終わったピアノに触れることができますし、アトリエでは修復途中の解体されたピアノや仕上げ作業中のピアノを見ることができます。

ピアノ修復師

昔のピアノへの情熱

15才の時から修行を始めた私は、 «美しいピアノ»が何よりもの価値基準であった両親の経営するバルロン社に入りました。 静かなアトリエで楽器と向き合う仕事のできる恵まれた環境の中で私は技術を習得し、それがこの仕事を続けていく情熱につながりました。40年以上に渡り手掛けてきたピアノ修復を通して、私は音楽遺産の継承を行ってきました。そしてそれを音楽愛好家たちに伝えるとともに、この素晴らしい遺産をまだ知らない人々の新たな発見となるよう手助けをしてきました。私がこだわって修復、 保護、保存をしている音楽遺産は、1840年から1940年に作られたピアノです。この仕事をするにあたっては、出来る限りの技術を駆使し、昔ながらの材料を吟味し、良い仕事をするのに必要な時間を割いています。それが美的にも音楽的にも良い結果となり、ピアニストを魅了するのです。

ピアノの公認鑑定士

バルロン社による誠意ある鑑定

シルヴィー・フアノンは、2011年にパリの控訴院より公認鑑定士の任命を受けました。公認鑑定は、民間の商業的な見積りとは異なる、レベルの高い綿密な鑑定です。それは、楽器の状態、技術的な可能性、必要な仕事の見積りと適時性について公平かつ信頼できる見解を提示するものです。公認鑑定は、控訴院が訴訟において正しい判断を下すために、技術的な面での詳細のレポートと論証を提示します。この鑑定のクオリティーは、民間の鑑定に加え、論証をより確かなものにします。裁判所の指示により行われるものですので民間の鑑定より説得力があるのです。公認鑑定士シルヴィー・フアノンは、保険会社や売主との訴訟の際に論証を必要とする人々のお手伝いをします。

伝達

生徒の価値は、教師がもたらす付加価値を超越する

44年にわたる実務経験を背景に持つシルヴィーは、工房の仕事に対する強い信念を持っており、その信念を、彼女の仕事に対するビジョンや、共通の理想―つまり「長期的な視点に立った良い仕事」―のために献身する姿勢を心から受け入れる人々と、分かち合っています。

こうして築かれた共通の価値観により、技術的な作業の過程においても、音響的な成果においても、そしてそれを実現するための哲学においても、この「本物」を求める音楽家や音楽愛好家の要望に応えることが可能となっています。複雑な作業の手順を理解することでノウハウを習得することこそが、数十年にわたり彼女と共に働くパートナーたちの最大の強みであり続けています。

彼女の特質の一つは、音楽的遺産の伝承という共通のプロジェクト——タッチ、音色、外観の美しさの融合によって、要求の高い音楽家の心を動かすこと——に結束する能力を評価し、長年にわたり選んできたパートナーたちの感性を自由に発揮させることです。

ピアノ・バルロンの歴史

100年の歴史をもつピアノ会社

"歴史の始まりは1902年のこと、オペラ・コミックの第一フルーティストであったルイ・バルロンとバリトン歌手で作曲家であったポール・バルロンが、オーケストラの楽器と楽譜を販売する店を開きました。1917年に彼らの姪のマルセル・バルロンが23歳で経営者となり、77歳まで続けました。彼女は、2つの戦争に挟まれた時代においてパリ中の音楽界との関係を保ちつつ、ピアノの販売を始め、ベヒシュタインの特約店となりました。1970年に再開したバルロン社は、フランス全土でのコンサートサービスや新しいピアノの販売、メンテナンスと修理を手がけました。1992年にシルヴィー・フアノンが受け継ぎ、1840年から1940年までのピアノ修復を専門とする会社となりました。

ピアノバルロン・ジャパン

シルヴィー・フアノンの最初の弟子、和田明子のピアノ工房

日本は、美と伝統の文化が深く根付いている、音楽愛好家の多い国です。2011年、フランスから帰国した和田明子は «ピアノバルロン・ジャパン »を立ち上げ、2013年、群馬県北軽井沢にピアノ工房を開きました。彼女はシルヴィー・フアノンのもとで得た10年間の経験を活かし、ヨーロッパのピアノを夢見る日本人に美しい昔のピアノを紹介しています。また彼女は、バルロンで修復され日本に送られた40台余りのピアノを見守っています。アトリエバルロンは、日本で明子が修復するためのピアノや、パリのアトリエを訪れた音楽愛好家たちが選んだピアノを日本へ輸出しています。

「生きた文化遺産企業」の認定を受けた工房

技術の認定

アトリエ・バルロンは2009年、EPV(Entreprise du Patrimoine Vivant:生きた文化遺産企業)の認定を受けました。経済・財務省が授与するこの認定は、卓越した産業的・職人的技術をはじめとする優れた資質を備えたフランス企業を顕彰するために設けられたものです。この認定は、バルロン社の職人技と歴史、そして昔のピアノという遺産を次代へ継承し、多岐にわたる伝統的技術を守り抜こうとするその姿勢を称えるものです。

その持続力と、修復作業において維持されている高い水準こそが、この工房の評価を確立する一因となりました。EPV(無形文化財企業)の認定は、その有効性を維持するため、5年ごとに国による監視と検証が行われています。

2024年、アトリエ・バルロンは、その一貫して優れた能力が評価され、パリ県知事より認定の更新を受けました。

アトリエ・バルロンは、経済省による「EPV(無形文化財企業)」認定、文化省による「メートル・ダール(芸術の巨匠)」の称号、そしてエマニュエル・マクロン大統領からシルヴィー・フアノンに授与されたレジオン・ドヌール勲章という、3つの国家的な栄誉をすべて有する唯一のフランスの工房です。